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 成功への近道:「逆算の哲学」
 



よく小学校のころ、夏休みが始まる前に先生が言ってました。



「夏休みの宿題は計画的にやり、決して8月31日に慌てる事がないようにしましょう。」



8月31日、私はきっちり慌てていました。しかも毎年。よくもまあ、懲りずに、小、中、高と毎年同じことを繰り返したものです。小学生のころは、泣きべそかきながら、1か月分の出来事を思い出して絵日記を書いていたことを、今でもはっきりと覚えています。あなたはいかがでしたか?



「計画を立てよう!」



とはよく聞く言葉ですが、具体的にどのように計画を立てたらいいのか、ということを私たちはあまり教わっていません。「計画を立てよう」と言葉で言うのは簡単でも、いざ、実際にやってみようとすると、何をしたら良いのか分からず、行き当たりばったりの計画を立ててしまいます。


ビジネスの世界でも、この「計画」という言葉はよく使われます。ビジネスの基本といわれるものに、次の言葉があります。



【PLAN−DO−SEE】



それを英語学習に当てはめたらいいのですが、漠然と手に取った教材を時間のあるときにやるというのが、ほとんどの英語学習者のしていることではないでしょうか。


それでは、前回コラムで説明したとおり、目標の英語力を達成することは難しく、「挫折するかもしれない度」がグーンと急上昇してしまいます。


私の好きな、メジャーリーガーのイチロー選手はもともと(日本のプロ野球界に入ったころ)、体も硬いし、上背もなく、パワーもあるとは思えないくらいほっそりとした体をしていました。しかし彼は、小さな頃から、理想の自分をイメージし、「
その理想の体になるためにはどうしたら良いか?」と常に自分に問いかけ、トレーニングを積んできたそうです。


スポーツライターの永谷脩さんは、その著書『野茂とイチロー「夢実現」の方程式』において、イチロー選手のことをこう言っています。


「イチローの素顔を見ると、驚くべき"準備人間"というか、"計画的人間"というのが見えてくるのである。彼は、より高い到達点を求め、正しい努力を積み重ねる。天才イチローは驚くほど準備人間であり、夢の実現に向かって計画を一つ一つ実行してきた。」



イチロー選手はその様にして、理想の自分を明確に持ち、今の自分とのギャップを計算し、それを達成する期限から逆算をして、今なすべきことを見極めたうえで行動しているのです。イチロー選手の成功は、この「
逆算の哲学」にあるといっても過言ではないでしょう。


「彼はプロだからできるんだよ。」と人は言うかもしれません。


しかし、本当にそうでしょうか?彼の小学校の頃の写真を見ると、本当にどこにでもいる野球少年です。プロ野球選手になった直後も、とても線が細く、華奢といった方が良いくらいの体つきでした。その普通の野球少年が、私のコラムで紹介してきた、「
決心する」「目標を紙に書く」「計画を立てる」という成功する人に共通の「成功法則」を使い、現在のメジャーリーガーの風格を持つイチロー選手になっていきました。


あなたにも同じことが絶対にできます。


挫折の連続だった私にもできたのですから、あなたにも必ず同じことができます。これからあなたにお伝えするスーパー・プランニングは、まさにこの「逆算の計画法」です。今の自分の英語力と、目標の英語力とのギャップを埋める作業をするために、すべての言い訳を捨て去り、「できる」と思ってやってみてください。本当にその通りの英語力を身につけている自分を見つけることができるでしょう。





アポロ11号を作った会社マクダネル・ダグラス社のウォルター・バーグ氏はこう言っています。


「ある一つの大問題も、たくさんの小さな問題の集合体に過ぎない。不可能と思われる問題に取り組むには、それを小さないくつもの問題に分解し、一問ずつ順次解いていくことです。」



1969年に、アメリカのアポロ11号が月面に着陸し、人類史上初めて人間が月の上に立つ、という、素晴らしい偉業を成し遂げました。そのアポロ計画の際、ケネディ大統領は、バーグにこう言いました。



「月まで人間を運びたいので、強力なブースターを搭載したロケットが必要なのです。とても不可能だ、という説明は今までにもうたっぷり聞かされてきました。いろいろ問題があるのでしょうが、何とか解決して、この大事業を完成していただきたい。」



その後、このバーグ氏が、様々な困難を最初の言葉どおり乗り越え、ロケットを開発したことが、それを可能にしたのです。


あなたにとっての大きな目標は、本物の英語力を身につけるということです。その大きな目標を小さな問題に分けて順次解決していけばいいのです。アポロ計画に比べたら、簡単に思えてこないでしょうか?


本物の英語力をつけるために1年間で必要なやるべきことを逆算して、1日にやることを計画していきます。この計画を立てる作業には、多少時間がかかっても結構ですので、じっくり腰をすえて作成してください。この計画の立て方に、あなたの将来の英語力がかかっているといっても過言ではないのですから。


目標期限を定め、目標の英語力と現在の英語力のギャップを確認し、その能力をつけるためのペースを決めます。そして、1日にやるべきことを逆算して導き出します。そして、必要な能力ごとにその計算をし、それを、1ヶ月ごとの小目標ずつカレンダーか手帳に書いていきます。(少し面倒くさいですが、これも、目標スコアへの一つの階段だと思ってください。)


山登りの例を思い出してみてください。準備もせず、装備も確認しないで頂上のみを目指したら、確実に挫折するのです。そうではなく、計画を立てることにより、毎日の小さなステップを確実にこなしていくことに集中して行くことができ、より少ない努力で目標を達成できるのです。特に英語は、毎日の小さなステップの積み重ねが大きな結果を生み出すことを覚えておいてください。



「人間は誰しも夢を見る。たとえ1回に15センチの歩みでも、やってみれば夢はかなうことがあると確かめられた。それが、僕のこの山登りの最大の成果だ。」



両足の自由が利かず、両腕だけを支えに、高さ960メートルの絶壁に挑み、見事登頂に成功したマーク・ウェルマン氏の言葉です。


テキサス州出身のウェルマン氏は、1982年、カリフォルニアのヨセミテ公園内にある岩壁を登っている途中墜落し、両足が麻痺するという事故にあいました。通常であったらその時点でロック・クライマーの道は断念するでしょう。一般的な社会生活を営むことさえ困難な状況に追い込まれたのですから。山への恐怖感、嫌悪感さえ起こって当然だったと思います。


しかし、山に対するウェルマン氏の執念は衰えませんでした。両足の自由こそ回復しませんでしたが、6年もかけて肉体を鍛え、周到な準備も積み重ねました。そして、1989年、山仲間が絶壁に張ったロープを頼りに、再度挑戦したのです。両腕だけで自分の体を引き上げる高さは、1回にわずか15センチ。40度近い暑さが肉体を極限の状況へ追いやりました。時間はあっという間に経過。1日、2日、ようやく9日目1センチずつの歩みが、6400回に達したところで、頂上を極めたのです。


この話からも分かるように、
1歩1歩の歩みはゆっくり遅くとも、続けていけば、大きな目標は達成できるのです。大切なのは、諦めずに挑戦し続けることです。自分の中に問題を克服する偉大な力が存在していることを認識した時、英語の方が屈服します。




みなさんも、今やっていることをひとまず止め、長期的な目標から、やるべき必要なことを逆算して、1日にやるべき小さなステップを決めてから、再び英語学習を始めるようにしていってください。





下半身不随の登山家マーク・ウェルマン氏は現在44歳となり、トラッキーの山岳コミュニティで生活しながら、彼の会社「No Limits (限界などない)」を運営し、障害を持っている人にアウトドアの装備を販売しています。


ウェルマン氏のホームページ → 


また、国中を旅し、多くの人に力強いスピーチをすると同時に、その障害をものともせず、まだ情熱的なスポーツマンとして、スキーや、クロスカントリー、カヤックなどもしているそうです。


そして、下半身不随になってから初めて両腕だけで登頂した1989年から10年経った1999年に、その登頂10周年を記念して再びヨセミテ国立公園の岩壁に挑戦しました。


この岩壁は、約1000メートルあり、全身が使える大人でも厳しいのに、下半身の自由がまったく利かず、両腕だけで頂上まで登るのはほぼ不可能に近いことです。しかし彼は、厳しいトレーニングの末に、それを可能にしてしまったのです。


彼は、この挑戦の日にこう言っています。



「私のメッセージは『障害を持っている人がここに来て、エル・キャプテンに登れ』ということではありません。そうではなく、彼らが人生において障害となっているどんな山でも登って欲しい、ということなのです。」



10年前よりもよりもさらにトレーニングをし、より強くなった彼は、前回登った「The Sheer」とは違う、より難しい「The Nose」というルートを取りました。そのルートは、この岩壁にある75〜80のルートの中で、最も難しいルートのひとつだったのです。


10年前と同様に、両足の自由が利かない彼が1回に登れる高さはわずかに15センチ、それを7000から8000回繰り返し、1週間かけて頂上まで登る予定でした。


しかし、10日分の食料と装備で100キロ近くあった装備の重さと、ルートの難しさ、また登頂前から引きずっていた病気などとの闘いもあり、そのペースは崩れ、10日たったところで、その食料と水は底をつきかけてしまいました。ですが、1日の食料を減らし、何とか空になる直前の11日目でやっと登頂に成功したのです。


毎晩彼は、その途中経過を彼のフィアンセに携帯電話でしていたそうですが、疲れてはいても、決して明るさを失うことはなく、ジョークを言い、笑い合っていたというから驚きです。


下半身不随という人生に影を落としかねない事故に遭っても、決して下を向かず、上へ上へと登ってきた彼には、きっとその大変なクライミングのプロセスですら楽しむことができたのでしょう。


11日間かけてその難しい岩壁の登頂に成功した彼らは、帰りは別のルートで、ラバの背に乗って降りてきたそうです。


彼の、多くの人々を勇気付けるためのあくなき挑戦と、その何物にも屈しない強いハートに、人の無限の可能性を見る気がします。


その10周年の登山の記事を詳しく読みたい方は →  (英語)


私たちの人生や英語学習に立ちはだかる岩壁を、彼の不屈の精神を見習って、登ってやろうじゃないですか!



マーク・ウェルマン氏の著作

Climbing Back

Mark Wellman, John Flinn


在庫はなくマーケットプレイスで
しか買えないようです)



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